シラバス

科目名コンテクストデザイン 【学期前半】

授業概要

学部・研究科
総合政策・環境情報学部
登録番号
43638
科目ソート
X1100
科目名
コンテクストデザイン
分野
特設科目
単位
2単位
開講年度・学期
2023 春学期
K-Number
FPE-CO-06103-221-88
開講年度・学期
2023 春学期
曜日・時限
金 1限 , 金 2限
授業教員名
渡邉 康太郎
実施形態
オンライン(ライブ)
授業で使う言語
日本語
開講場所
SFC, その他
授業形態
※「授業形態」と「能動的学修形式」の対応についてはこちらをご覧ください。
講義, 演習, グループワーク, 遠隔あり
GIGAサティフィケート対象
非対象

詳細

講義概要

ノートの端の落書き、シャワー室での独り言、深夜の電話で交わされる言葉や、誰も反応することのないソーシャルメディア投稿。誰かが敢えて聴き取って書き留めなければ、おそらく忘れられ、決して歴史に残ることのない、「取るに足らない」もの。でも当人たちは、誰にも求められていないのに、何かに駆られるように表現してしまうもの──。
この授業は、このような、社会に必要とされていないと思われるもの、でもある個人にとっては大きな意味を持つもの、を扱います。
***
デザインは時代とともに役割を変化・拡張させてきました。構造や機能、形態や色彩を与える設計とエステティクスの役割。リサーチ、プロトタイピングなど、コミュニケーションや意思決定の役割。ビジネスモデル構築やビジョン定義など、組織が目指す方向性や存在意義を構想する役割。また気候変動や公平性、地域などの課題の可視化や解決の役割……。
このような役割の変化・拡張は、概ねデザインの専門家による活動を中心に発展してきました。一方で、「デザインは、デザイナーだけのものにしておくには重要すぎる」という言葉が示すとおり、今日デザインは、一般の人に開かれた道具としても活用されており、たとえば行政のサービス設計、社会運動や自律的なエコシステム構築などにも応用されています。
デザインに関わる人が専門家以外にも拡がるなかで、その社会的な意義は高まっています。デザインが、多くの人が必要とする、問題解決の方法論を提供できるためです。これは「強い文脈」のためのデザインとでも呼ぶことができるでしょう。一方で、必ずしも社会でいますぐ必要とされていないもの、しかしある個人のために意味をもつもの──「弱い文脈」と呼びましょう──のために、デザインを活用できないものでしょうか?
コンテクストデザインは、個人が語る「ものがたり」(ナラティブ)や個人による解釈「弱い文脈」を重視するデザインアプローチです。それはデザインに触れた一人ひとりから、それぞれの「ものがたり」が生まれることを可能にします。
言い換えるならば、読み手の主体的な関わりと多義的な解釈が表出することを、書き手が意図した創作活動であり、「共に編む」ための手法です。その結果、いつのまにか消費者が表現者に、読み手が書き手に変わることを企図しています。
人は誰しも生まれながらに豊かな創造性を持っています。しかし多くの人は、成長とともに、創造性は一部の人の才能だと考え、自らの能力に「見えない足枷」を嵌めてしまいます。この足枷を解き、創造性を取り戻すために、デザインは何ができるでしょうか?
社会で見落とされがちなもの、見つけづらいものを見つめ、残るはずでなかったものを残すために、デザインは何ができるでしょうか?