世の中には様々な社会問題があります(虐待、貧困、戦争など)。これに対して政府は様々な分野で政策を展開しています(教育、地域再生、医療、福祉、海外経済協力など)。社会問題側からみても(需要側)、政府の仕事の側からみても(供給側)、公共政策の領域は多岐にわたります。この授業ではそこで政府(政治、行政)、民間セクター(NPO,社会企業など)、個々人(国民、住民)が果たす役割と手法(規制、誘導、支援など)、それらの限界と課題を考えます。また政策の形成過程や評価、修正のプロセスについて考えます。
より履修者目線に立った授業の獲得目標は2つです。
①個別の政策の課題の本質を理解する
医療、教育、スポーツ振興(オリンピック)、地域再生、大都市問題などの具体政策課題の事例分析を行います。その際にはマスコミ情報や政治家・政府の公式コメントの背後に潜む「利害対立」「政策と現象の悪循環」等の構造を掘り下げます。またそのためのフレームワークを提供します。
事例分析の教材としては(1)政府の公式資料、(2)マスコミ情報(3)研究者の論文や批評、を使います。これらを比較解析しながら履修者各人が自分なりの見方を構築するお手伝いをします。
②政策課題の解決方法を考える
個別の政策問題の構造を理解し、「あるべき姿」を描いたとしても実際にそれを実現(改革、政策の変更)するには法律や予算に反映、つまり政治と行政を動かす必要があります。そのためには政治や行政に特有の運動法則を学ぶ必要があります。たとえば理想的な政策の多くは既得権益勢力と対立するため議会での合意形成が容易ではなく、また執行過程で官僚の反対にあうこともあります。政策課題の本質を理解し、さらにその解決策を検討するには政治と行政の運動法則を理解する必要があり、そのためにこの授業では公共政策の前提(担い手)としての「民主主義(議会)」「官僚制(政府)」の実態と問題点についても扱います。