
音楽神経科学(NeuroMusic)
藤井研究会では以下の研究プロジェクトに取り組んでいます。
【 Musician’s Brain: 音楽家の脳 】 音楽家の脳は、非音楽家の脳と比較して、一体何がどのように異なるのでしょうか。本プロジェクトでは、ゴスペラーズ北山陽一氏、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室MTR Labと共同で、音楽家の脳について研究します。核磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging: MRI)、経頭蓋磁気刺激法(Transcranial Magnetic Stimulation: TMS)、脳波(Electroencephalography: EEG)等の手法を用いて、音楽家の脳の構造と機能を調べ、非音楽家と比較することで、音楽トレーニングが脳に及ぼす影響について研究します。下記「音楽と精神医学」の研究メンバーと連携しながら研究を進めます。
【 Music Psychiatry: 音楽と精神医学 】ヒトの音楽性と心(こころ)の脳内起源とは一体何でしょうか。音のピッチやリズム、ハーモニーを知覚生成する能力と心の健やかさの間にはどのような関係があるのでしょうか。本プロジェクトでは、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室MTR Labと共同で、統合失調症、うつ病、軽度認知障害、双極性障害、自閉症スペクトラム障害等の精神疾患を対象とし、音楽機能と精神症状の関係性について研究します。SFCと医学部信濃町を行き来しながら、経頭蓋磁気刺激法(TMS)と高解像度脳波計(EEG)を組み合わせたTMS-EEG、磁気共鳴画像法(MRI)、安静時脳機能画像法(rs-fMRI)、拡散テンソル画像法(DTI)、MRスペクトロスコピー(MRS)、メタボローム解析、認知機能検査、音楽機能評価テストの実施等、最先端の神経科学・医学研究手法について学ぶことが可能です。
【 Music Medicine: 音楽と薬 】音楽の力を人々の心身健康のために活かすにはどうすればよいでしょうか。本プロジェクトでは、神経科学的なエビデンスに基づいて、音楽を「薬」として使えるような未来を創造することを目指し、基礎的研究に取り組んでいます。現在、湘南慶育病院リハビリテーション科と共同で、脳卒中患者における音楽機能と臨床症状及び脳機能の関連性の検討、赤外線光イメージング装置(Near-infrared Spectroscopy: NIRS)を用いたデジタルメディアアート課題遂行中の脳活動評価をテーマに研究を行なっています。また名古屋大学と共同で、音楽を放射線ガン治療効果の向上に活かすための研究や,血圧を下げる音楽についての研究にも取り組んでいます。
【 Human Augmentation: 世界最速ドラマーを超えるインタラクション技術の開発 】ヒト(Human)の学習能力を最先端のインタラクション技術を用いて拡張(Augmentation)し、凡人が天才を超える未来を創造することは可能でしょうか。現在の「両手ドラム早叩き」の世界ギネス記録は「1分間に1208回叩く」という記録です。担当教員の藤井は、これまでの自身の研究で世界最速ドラマーの筋活動の特徴を明らかにしてきました。本プロジェクトでは現在、シカゴ大学のPedro Lopes 博士と共同で研究を行い、筋電気刺激(Electrical Muscle Stimulation: EMS)技術を用いた独自の世界最速ドラムトレーニング方法を開発しています。最先端のHuman Computer Interaction 技術でヒトの運動学習能力を拡張し、SFC生が世界最速ドラマーに勝利することに挑みます。
【 Motor Control: 音楽家の身体運動制御 】熟練した音楽家はどのように身体運動を制御し、感銘的な音楽パフォーマンスを実現しているのでしょうか。本プロジェクトでは、音響解析やパフォーマンス解析、モーションキャプチャーデータを用いた動作解析の手法を用いて、音楽家の巧みな身体運動制御メカニズムを解明することに取り組みます。現在、熟練ドラマーの3次元動作分析、パーカッション奏者の最速タッピング運動解析、トロンボーン奏者の最速タンギング運動パフォーマンスの解析、指揮者の知覚運動制御等の研究に取り組んでいます。
【 Music Chill: 音楽感動体験の拡張】ゾクゾクする音、触覚を感じる音とは一体何でしょうか。本プロジェクトでは、SFC TAUCH LAB(仲谷研)と共同で、音楽感動体験が生じる生理心理機序の基礎的理解と、音楽の感動体験を増幅する技術の開発に取り組んでいます。バイノーラルマイクを使ってレコーディングした音が、ヒトのゾクゾク感をどのように増幅させるのかについて研究したり、音楽の感動のしやすさが個人毎になぜ異なるのか、バルセロナ式音楽報酬質問調査の日本語版を作成して調査を行っています。また、超低周波音(インフラソニックサウンド)や冷感触覚フィードバックを用いた新たな音楽聴取方法の提案を行なっています。
【 Music and Baby: 赤ちゃんの音遊び】赤ちゃんが楽器に触る時、音で遊ぶ時、その脳や身体には一体何が起こっているのでしょう。本プロジェクトでは、東京大学大学院教育学研究科発達脳科学研究室と共同で、身体運動可聴化技術を用いた乳児の音遊び行動とその生理的特性の解明、成人用エアドラムデバイスを用いた乳児身体運動の可聴化及び楽譜化への取り組み等の研究を行っています。