
最近よく用いられる言葉の一つに「戦略」がある。しかし戦略(strategy)と戦術(tactics)の区別すら理解できていない人達が、公的な場で影響力のある発言を行っている例が散見される。本科目では、様々な分野に立ち現れる戦略的意思決定の本質を理解し、各履修者の関心領域における問題発見・解決に役立つ基本的なアイデアの習得を目指す。さらに、こうした戦略的意思決定を行う主体を相手に、社会的な観点から何らかの意味で好ましい(これ自体も検討対象だが…)制度をいかに設計するかについても、有益なヒントを得たい。
こうした問題意識に基づき、経済、ビジネス、政治過程、国際関係等といった個別分野の各事例に応用可能な非協力ゲーム理論のエッセンスを学ぶと共に、最近の実験経済学の成果についても簡単に触れる。また公共選択論的な観点から、望ましい政策の実現がなぜ難しいのかについて検討した上で、我々が規範的判断を下すにあたって、その拠って立つ基盤を何に求めたら良いのかについて、A.Senの議論を参考にしつつ総括する予定である。