
1972年(約50年前)に出版された『成長の限界』(ローマ・クラブ)は、「世界人口、工業化、汚染、食糧生産、および資源の使用の現在の成長率が不変のまま続くならば、来たるべき100年以内に地球上の成長は限界点に達するであろう。」と指摘した。しかし、その後も人間活動による地球への負荷は増え続け、人間活動が地球環境に与える影響を示す指標の一つである「エコロジカル・フットプリント※」は1970年代から倍増し、世界全体で、地球が生産・吸収できる生態系サービスの供給量(バイオキャパシティ)の1.7倍に達している。特に、先進国に生きる私たちの生活は、生産と消費が切り離され、極めて歪んだ形(環境負荷を他の地域や将来世代へ転嫁する形)で維持されており、生じる汚染の浄化コストも十分に考慮されていない。その帰結として、発展途上国における環境問題は深刻化し、世界全体でも気候変動の影響が徐々に現実のものとなっている。
本科目では、グループワークを通じて、自分たちで「環境の境界を決めて自然資源を管理すること」を試みる。管理する対象である環境と人口の規模、それに応じた受講生一人一人の役割なども議論を通じて決め、限りある自然資源を持続可能なものとする「設計」に挑戦する。議論のベースとして多くの基礎情報を必要とするため、授業準備として課される課題は、資料集め・データ整理が中心となる。
※エコロジカル・フットプリント:私たちが消費する資源を生産したり、社会経済活動から発生するCO2を吸収したりするのに必要な生態系サービスの需要量を地球の面積で表したもの。