
2050年の世界秩序を洞察する—企業、市場、国家の融解と再構築
2050年の人間観(仮題)
月曜5限にSFCもしくは日によってオンラインで開講します。
○この研究会の目的は、履修者が卒業後に困難な課題を解決していくためのスキル(HOW)の育成に特化します。
〇具体的にどういうスキルを磨くのか?
①表面的な事件や問題の背後によこたわる本当の課題を見抜く洞察力 ②社会的な課題を解決する分析力、③個人や集団の活動を社会変革のうねりに増幅する力(発信力、交渉力)等です。より具体的には、フィールドワーク、インタビュー、速読、レポートライティング、グループ討議、プレゼン(資料作成、説明・発表)等の実践スキルの醸成と脳の筋トレです。これらを通じて改革とイノベーションを率いる課題解決能力を醸成します。
○進め方:グループワークと毎週の輪読の二本立てで取り組みます。輪読は毎週1冊のペースで各学期のテーマに関する名著や素養となる文献を幅広く読み、各人がミニレポートを書いてきます。それをもとに毎週の授業ではチームで討議、さらにそれに基づくクラス討議を行います。これらの積み重ねを経て各人レベルで定見を養います。なおグループワークについては学期末にOBOGや研究者に向けた研究成果の発表を行います。
〇どういう本を読むのか
広く文明論、世界史、地政学からテクノロジーまで視座を広げて古典を含む名著を選び、洞察の射程を広くとります。分野的には約10冊は全員共通文献として読み(履修予定者と相談して選択)、残りはグルワでカバーします。
参考1:過去の本研究会のテーマ
この研究会ではこれまで社会思想史の本を主に読んできました。すなわち、ギリシャ、近代啓蒙主義の政治思想、社会思想、比較文明論、歴史、経済史、社会学、心理学、国際関係などです。なお純粋哲学書は読みません。あくまで現実の世の中はどうなっているのか、どうなるのかを探求する書籍を選んできました。例えばこれまでにはロック(「市民政府論」)、アダム・スミス(「国富論」)、ルソー(「人間不平等起源論」)、ハンナ・アレント(「人間の条件」)、JSミル(「自由論」)、プラトン、アリストテレス、カント、ヘーゲルなどを読みました。 なお時折、最近の名著(「暴走する資本主義」「コミュニティを問い直す」等)も読みます。日本論や昭和史の本、東洋史、東洋哲学も読みます。例えば老荘思想、儒学、内藤湖南、網野義彦、宮本常一、等の本です。なお一部を抜粋してよむときもあります。
参考2:2019年春学期のテーマ(過去のシラバスの抜粋より)
この期では人類が歴史の中で培ってきた「戦略」「組織」「財務」「デザイン」の4つについてその発展の歴史を掘り下げました。①「戦略」:戦略は現代では企業経営を意味することが多いですが、もとは軍事から育まれたサイエンスです。授業ではギリシャ・ローマの古典(キケロ、シーザー等)、孫氏の兵法、三国志などを手がかりに古代の戦略をみたのち、マキアベリ、クラウゼビッツ等の軍事外交哲学を学んだうえで近代の経営学の名著をカバーし(ドラッカー等)現代の企業や国家における戦略論に何を学ぶかを考えました。②「組織」:組織論は戦略論の実行の際に欠かせない理論ですが、主に近代において化石燃料と工業、近代兵器、官僚制を背景に発展しました。ここではカーネギー、テイラー等の近代組織論、マックスウエーバーの官僚制やプロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神、石田梅岩、近江商人哲学、フランクリン自伝、二宮尊徳等の経営倫理にまで射程を広げ、組織の成員の力をどう引き出すか、先人たちが考えてきた組織論と経営哲学を学びました。③「財務」:戦略と組織を最高の状態に保つには兵站機能、すなわち、資材の調達・運送・保管、資金の調達と管理、経理、会計、簿記などが不可欠です。これらの”ソフトインフラ”の元で株式市場や会社制度、あるいは政府の予算、財政、金融、監査、業績評価、標準化などが機能しています。こうしたソフトインフラは今やITサービス化されモジュール化されつつあります。今期はこれらがどのように生まれ、どこに知恵が埋め込まれているのかを探ります。特に株式会社の起源、複式簿記の誕生、会計監査の限界、標準化(度量衡、技術基準など)の戦略的意義等も考えました。④「デザイン」:現代の先端経営のキーワードはDX(デジタルトランスフォーメーション)とSD(サービスデザイン)といわれています。企業と世の中の営みのデジタル化に伴って、従来アナログに行われてきた各種のデザインが変質しつつあります。あるいはサイエンスだけでなくデザインが経営の差別化要素として生かされ始めています。経営者も芸術や文化へのリテラシーと感度を上げる時代になりました。授業ではその背景と展望を探りました。