
【Brexit(英国のEU離脱)から考える英国、欧州、世界】
2016年6月の国民投票で英国民はEU離脱を選択した。その後、EU離脱をめぐって英国政治は大きく揺れ、迷走を続けたものの、2020年1月末に離脱が実現し、同年末までの移行期間が開始された。その間、EUと英国は移行期間終了後の関係構築の交渉に入ったが交渉は難航し、「合意なき」移行期間終了が懸念された。移行期間終了を1週間後に控えた2020年12月24日、EU・英国交渉は妥結に至り、貿易・協力協定(TCA)が締結された。柱となるのはFTA(自由貿易協定)だが、内容的には限定的なもので、いわゆる「ハードBrexit」を体現するものとなった。
一連の過程において、Brexitをめぐる諸問題が明らかになった。そこでこの講義では、Brexitをさまざまな観点から改めて問い直すことにしたい。例えば、国際秩序の動揺、ポピュリズム、グローバリゼーションから取り残された人々(経済格差)、欧州安全保障の行方、EU統合の本質、国民投票に関する諸問題、離脱後のイギリス外交(「グローバル・ブリテン」)、日英関係などを取り上げる。Brexitをイギリスの問題としてのみならず、EU、さらには世界(国際秩序)の問題として考えたい。