
ヒトはアートと共に始まった。私たちの知覚対象に、区分をつくり、想いを抱き、名付けたとき、それは生まれた。コトバ、文字、星座、子供の命名、洞窟の壁画。ヒトの知的・情的活動の原点に、アートはあり、私たちが認識する世界が存在する。
本講義は広義なアートの解釈に触れ、「知のインプット」と「感情のアウトプット」を通じて、「アートとは何か」を体得していただく。授業は1)講義 - Lecture 2)対話 - Discussion 3)訓練 - Training の三部構成を基本とし、現代アートに対する理解を深めながら、インタラクションを通じてクリエイティビティを撹拌する。講義では形而上学、言語学、記号学、心理学、等の人間的諸事象を取り上げ、「思考作用による意味づけ = 概念」と「 情感を外に出す行為 = 表現」の関係性を考察していく。講義後、対話の時間を通じてコミュニケーションに慣れ親しんでもらい、即興的な発想力を身に付ける練習として、講義内容に関連した設問を出題し、授業内に発表していく。
私は実践こそ、アートを学ぶ最も早い方法であると考える。従って、最終課題は作品制作とする。作品のスタイル・メディア・技法は一切問わないが、コンセプト文は必須とする。表現者視点でアートに向きあうことで、各々が抱くアート観を見出してもらい、自己を発信する術を身につけることを目指す。 本講義で得られるアート思考を通じて、これからの時代をアクティブに生き抜くヒントにしていただきたい。
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ACCI BABA (ババアツシ、馬場 淳)。1977年、神奈川県生まれ。ドイツ・ベルリンを拠点に活動する、ビジュアルアーティスト・現代美術家・映像作家。2019年より慶應義塾大学環境情報学部特別招聘教授として着任。文化庁メディア芸術祭 (2009/日本)、Webby Award (2012/米国)、現未来科技芸術之星賞(2019年/中国)等、国内外で受賞。近年の展示会として個展:’ab aeterno’(2018/Kunsthalle Bremerhaven/ドイツ)、国際グループ展: ‘The Art of Simulation’ (2018/ドイツ)、’13th Digital Art Festival Taipei’ (2018/台湾)、’Burning Man’ (2020/米国)など、これまで20カ国以上で展示。近年の講演として、TEDx TOKYO (2010/日本), Asia-Baltic Creative Days (2017/リトアニア), 第四届上海国际数字媒体艺术教育研讨会(2019/中国)等。オフィシャルサイト:https://accibaba.com