
人間が工業製品、建築、都市環境などをデザインし構築するという行為には共通の難しさが存在する。感的なアイデアやセンスと、求められる前提条件に合致させる合理的な思考方法の両方が問われるからだ。情報技術の発達が建築や都市空間のデザインに与えた影響について様々な側面から考察する事によって、この課題はより科学的かつ重要になって来ている。特に、デザインと現実を繋ぐメディアがデジタルデータとなって広範囲な応用と、情報共有が可能となるにつれデザインの方法にとどまらない様々なプロセスに影響が起きつつある。構造、音、熱、気流などの様々な環境要因についてのシミュレーションや、複雑で設計作業が困難だった立体的関係の検討が可能になり、アルゴリズムによって建築の機能条件の解決可能性をコンピュータで高速に計算させる人工知能的な手法も登場しているからでである。この傾向は、さらにデジタル制御の製造加工技術との連携や、IoTのような人工物自体の知能的自己制御にも結びつくことで、広範な問題と考えられる。本科目ではデザインにおける創造的態度の認知科学的側面、哲学的側面、工法技術的側面、文化文脈的側面等に対して現在の情報技術が与える影響についての総合的理解を形成する。