
我々人間の行動は、時々刻々と変化する身体外部・内部の環境に関するさまざまな情報が、感覚神経を介して脳や脊髄といった中枢神経系へフィードバックされ、ここで処理・統合されることにより巧みに調整されています。また脳の関与なしに起こる不随意運動(反射)にも感覚系は密接に関与しており、これにより我々は様々な危険を無意識的に回避しています。このように、各種感覚機能は我々が安全かつ快適に生活するうえでなくてはならない重要な要素であり、これに関する理解を深めることは人間の行動の本質的な理解につながります。
本講義では、人間を入力・出力を伴う「情報系」として捉え、身体内外の情報が感覚システムを介してどのように検知され、どのように中枢神経系で処理されるかという感覚の生理、およびそこからどのようなメンタルプロセスを経て行動が決定されるのかという感覚の心理について学びます。時間の制約上、本講義では主に視覚系と体性感覚系(皮膚・筋・関節などの身体の感覚)に重点をおきます。