
企業の主な資金調達手段は株式発行による資金調達と銀行借入であるが、ともに地方では十分に機能していない。ベンチャーキャピタルの多くは東京偏重であり、地方の投資案件はなかなか捕捉されないことと、地方の企業の多くは上場を目指すような全国規模の事業スケールを持たないため、株式による資金調達には不向きである。また、融資では、創業支援の融資や保証制度が充実しつつあるが、続く拡大ステージにおける運転資本の融資には地域金融機関が及び腰なケースが少なくない。
このように地方の中小企業とベンチャー企業、そして地域課題や社会課題の解決を目的とするソーシャルビジネスは伝統的に、資金、特にリスク性資金の供給を受ける機会が限られていた。ただし最近、社会問題解決のための新たな資金調達源であるソーシャルファイナンス手法が様々登場しており、企業は地域の発展という課題解決のためにクラウドファンディング、社会的インパクト投資、ふるさと納税など(以下、まとめてソーシャルファイナンス)を用いて資金を調達し、新規ビジネス創出や事業の拡大を行い、社会課題、地域課題の解決役を担いつつある。
各資金調達手段はどのような事業との相性が良いのか、ソーシャルファイナンスは従来の資金調達手段に比してどの程度地域でのアントレプレナーシップ創出や地域課題解決に効果があるのか、これらの実務上も研究上も重要な問いを本講義で受講生と共に議論を深めていく。