
国際関係論の理論、特にマクロ国際政治理論を中心に扱う。マクロ国際政治理論とは、国単位、システム単位の国際関係を理解する場合のレンズに相当する。前半では理論の役割と展開、さらに勢力均衡論、相互依存論、世界システム論の三つの大きなパラダイムの理論を紹介する。後半では、大きな問題領域ごとに、それぞれを分析する複数の理論的アプローチを紹介することで、相対的な視点を養う。
国際関係論に限らず、社会科学の理論の必要性についてはしばしば疑問が投げかけられる。一般的に理論は説明力と予測力を求められるが、社会科学の場合、社会が変化してしまうので、後付けで説明をすることは可能だが、予測をすることは難しくなる。予測が社会を変えてしまう可能性があるからである。したがって、社会科学の予測「率」は当然低くならざるをえない。そこで、本講義では、社会科学の理論に求められるのは、説明力とともにシナリオを提示する力であるという立場をとる。
なお、限られた時間の中で、さまざまな理論的アプローチを紹介することになるので、それぞれの紹介はどうしても平板なものにならざるをえない。この講義の主題は、数多くの理論的アプローチの見取り図を頭の中に作成することにある。講義の中で聞いたことだけですべてを理解した気にならず、参考文献リストを中心に自分で読み込み、理解を深めることが不可欠である。そうした見取り図を頭の中に作った上で、自分なりに既存の理論を評価・批判しながら、現代の国際政治の問題を分析する力を身につけることがねらいであり、知識を身につけることがねらいではないことに留意して欲しい。