
本講義は、インドネシア地域統合論概論である。インドネシア社会、とりわけその中枢を成すジャワ社会は、基本的に支配階層と被支配階層とから成る二階層社会であると考えられる。この社会を歴史的に見た場合、西洋社会とは異なり、土地をもって社会的富力の源泉、富蓄積の基盤にすることが出来なかった。そこでは、人間同士を結びつける社会関係(人間関係)と、これを支える価値観・社会的通念が重要な役割を果たしてきたと考えられる。こうした見地から本講義では、東南アジア社会の政治的文化的特徴、地域学の存在意義、インドネシア社会の階層構造の考察を通じて、インドネシア地域を統合する価値観・社会的通念を体系的に描出してみたい。
本講座ではインドネシア社会の階層構造とそこに暮らす人々の意識構造の関連を究明することが中心となるため、広くアジア、アフリカ、中南米などの非欧米社会における「支配階層と被支配階層の関係」(政治学、社会学)や「支配のための観念体系」(文化人類学)に関心を持つ学生にとっても有益な講義を展開したい。