
「圧縮近代」と称される戦後韓国の急速な経済発展は、1960年代からの国家主導の開発経済体制の中で実現した。典型的な発展途上国であった韓国は、1960~70年代の開発の時代、1987年の民主化宣言、1997年のIMF経済危機、2008年の世界金融危機を経てダイナミックに変貌を遂げた。しかしその間有効性を発揮した政府主導の官治経済体制は、もはや賞味期限を喪失した。国内市場の開放、高賃金国家への移行は韓国経済の基本的枠組みを根本から変え、グローバル化の影響はそうした動きを一層速めている。
サムスン電子や現代自動車、ポスコに代表される韓国発のグローバル企業は、世界を舞台に活躍する一方、先進国企業や後方から急速に追撃する中国企業などとの間で熾烈なグローバル競争を展開している。
ではその間、韓国社会はどのような変貌を遂げたであろうか。財閥の急成長に牽引されて経済水準が全般的に大きく底上げされ、韓国が非常に豊かな国になったのは歴史的事実である。先進国の仲間入りを成し遂げたと見なすことも可能だ。しかし国内での経済格差はますます拡大し、 豊かさを実感できるグループとそうでないグループとの間には少なからぬ摩擦や葛藤が存在し、政治的対立を生む背景を形成している。
本講義では、 歴史的な環境変化の中で財閥を中心とする韓国社会がどのような変貌を遂げつつあるのか、国内での政治状況の変化を踏まえて考察していく。