
臨床と教育
臨床と聞くと医療分野を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし教育においても臨床はとても重要な営みです。教育における臨床とは、学んでいる人にしっかりと寄り添い、その人の普段意識をしない声にならない声をしっかりと聞き取ることを意味します。
たとえばある効果的な学習方法があるとしましょう。その方法で95%の人がスキルを身につけられるとしましょう。このようなケースにおいて、臨床における教育は、95%を100%へと精度をあげていく教育ではありません。そうではなく5%のこぼれ落ちるかにみえる学習者のために、彼らに寄り添い、一般化できない学びに言葉を与えていくことが臨床の目的です。
個々の学習者にとってかけがえのない体験を意識化する=個別性を認識することこそ、これからの教育に求められていることだと考えています。
もちろん教育は個人的な体験だけにとどまりません。むしろ自分が変わってゆくなかで、自分と他者、自分と異なる世界との関係をどう作り上げていくか、「異なるものとの関わり方」にも必然的に目を向けてゆくことになります。例えば異文化間教育の意義もこの点にあります。
この研究会では「学習者に声を丁寧に聞き取る行為」を臨床と名づけ、人々の学びの道程に付き添って、観察し、そして人々の学びの継続の意義の深さを研究することを目指します。
担当者の教育分野は外国語ですが、それ以外の分野についても研究計画書で判断して、研究会の他の学生と協働しながら進められると判断すれば、選考の対象とします。
ちなみに21年度の4年生の卒論テーマは以下の通りです。
・セミリンガルとバイリンガル
・地方公立高校における進路指導
・学生寮における関係性と自立
・新人教師からみた教職課程
・帰国子女はいつ帰国子女をやめるのか