
人間は生まれながらに動く生物である.動くことで外界に触れ,感じ,成長する.また動くことで自己を表現・確立するとともに,他者との関わりを持つことができる.すなわち,「運動」は我々人間の根源的な営みであり,この仕組みを正確に理解することは,人間そのものの本質的な理解という基礎科学的な価値にとどまらず,自己や他者の健康問題を再考する上でも意義深い.本講義では,人間の脳と身体をひとつの「システム」として捉え,脳・神経系/筋・骨格系/エネルギー供給系がいかに連動しながら運動が成り立っており,これを繰り返すことで如何なる可塑的変化が生まれるかという運動の生理,およびどのようなメンタルプロセスを経て我々の運動行動が決定・制御されるのかという運動の心理について学ぶ.