シラバス

科目名特別研究プロジェクトA (宿泊)(音楽療法の科学)

授業概要

学部・研究科
総合政策・環境情報学部
登録番号
32448
科目ソート
A1201
科目名
特別研究プロジェクトA
分野
研究プロジェクト科目
単位
4単位
開講年度・学期
2022 秋学期
K-Number
研究会テーマ

音楽神経科学(NeuroMusic)

我々の日常生活には、音楽が溢れている。では音楽とは何か、と問われたとき、科学的な観点や知見に基づいて洞察できる人々はこの世にどれくらい存在するだろうか。我々の日常に当然かのように存在する音楽。しかし我々は、音楽のことをまだよく知らない。NeuroMusic 研究会の主題は、音楽の「未知」を解き明かし、その本質に科学的に迫ることである。

近年、脳・神経科学の飛躍的な発展に伴い、音楽はヒトの脳や身体でどのように処理されているのか、その仕組みが徐々に明らかになってきた。得られた知見の中で、とても興味深いのは、我々が普段何気なく楽しんでいる音楽が、実は人類の文化・進化・発達の起源や、社会性や創造性、知覚、認知、運動、記憶、情動、学習など、人間の生物としての本質に非常に深く関わっている点である。なぜ、我々ヒトの脳や身体には、音楽に感動したり、癒されたり、踊ったり、歌ったり、演奏したり、音を楽しむ能力が備わっているのか。その理由を脳・神経科学の観点から解き明かすことは、人間の本質を探究することに他ならない。「音楽神経科学 (Neurosciences and Music: NeuroMusic)」は、人間の本質や起源に迫りうる、大変心躍る科学研究分野である。

本研究会の目的は、「音楽神経科学(NeuroMusic)」をテーマに、謎に満ちたヒトの音楽性の脳内起源を解き明かすことである。音楽とは一体何か、音楽サイエンス分野の開拓に取り組みたい人は、是非研究会の門を叩いてほしい。心から歓迎する。

開講年度・学期
2022 秋学期
曜日・時限
授業教員名
藤井 進也
実施形態
対面
授業で使う言語
日本語
開講場所
SFC, その他
授業形態
※「授業形態」と「能動的学修形式」の対応についてはこちらをご覧ください。
講義, 実験・実習・実技, グループワーク
GIGAサティフィケート対象
非対象
研究会・来期の研究プロジェクトのテーマ予定

音楽療法・音楽支援リハビリテーションの効果検証に関する研究 Music Therapy Project
音楽療法は、音楽を聞いたり演奏したりする際の生理的・心理的・社会的な効果を応用して、心身の健康の回復、向上をはかる事を目的とする、健康法ないし代替医療あるいは補完医療である。現在の音楽療法で希求されているのは科学的エビデンスの充実である。本プロジェクトでは、富山県の紫蘭会光ヶ丘病院と共同で、音楽療法・音楽支援リハビリテーションの効果の科学的検証に取り組む。脳卒中患者への運動療法、デイケアでのBGM効果・音楽療法効果、認知機能と音楽機能の関連を科学的に調査する。2022年秋学期から本研究プロジェクトに取り組みたい人は、紫蘭会光ヶ丘病院のHPやSNSをみてその取り組みをチェックすると共に、本特別研究会に参加することを推奨する。

詳細

講義概要

音楽療法(Music Therapy)は、音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて、心身の健康の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用することえある(日本音楽療法学会)。近年、音楽療法のニーズは高まっており、介護施設や医療現場などで用いられているが、根拠となる科学的エビデンスが不足していることが課題である。よって、科学的根拠に基づいた音楽療法(Evidence-Based Music Therapy)の発展が希求されている(板東, 2008; 佐藤, 2011)。そのような状況の中、音楽がヒトの脳内でどのように処理されているのか、音楽の脳内処理の科学的解明を目指す「音楽神経科学」研究分野の発展に注目が集まっている(藤井, 2018)。音楽神経科学の発展は、脳神経科学的根拠に基づいた音楽療法分野(Neurologic Music Therapy: NMT)を開拓する上で重要である(アルテンミューラー&シュラウグ, 2013)。近年、音楽経験を豊富に積んだ高齢者は、音楽経験の少ない高齢者に比べて、ワーキングメモリーや実行機能など、認知課題の成績が優れていると報告された(Grassi et al., 2017) 。また、音楽に合わせた運動は、高齢者や認知症患者の認知機能を改善・維持する効果があると報告された (Satoh et al., 2014; 2017)。これらの先行研究を踏まえると、音楽はヒトの認知機能の改善や維持、長寿健康社会の実現に有用であると示唆されるが、その効用やメカニズムはまだ十分に科学的に検討されていない。本講義ではまず、音楽療法の基礎や現状、課題について学ぶ。次に、医療法人社団 紫蘭会 光ヶ丘病院 新藤悠子先生のご協力のもと、デイケアで実施される音楽療法や音楽支援療法、BGMの効果についてどのような検証が実際に行われているかについて学ぶ。具体的には、音楽の即時的効果や長期的介入における認知機能・意欲・うつなどへの影響、その効果と音楽機能や音楽歴などの背景の関係を検証するため、どのような科学的アプローチや認知・音楽機能評価が行われているのかについて、実践的に学ぶ。また、実際に、富山県高岡市にある医療法人社団 紫蘭会 光ヶ丘病院を実際に訪問し、デイケアでの音楽療法・音楽支援療法・BGM使用の現場を見学すると共に、認知・音楽機能評価を実践する。最後に、認知・音楽機能評価のデータ解析、統計学的分析の方法についても学ぶ。