
ネットワーク環境を前提として、われわれの「移動」に関わる諸側面の再編がすすんでいる。ソーシャルメディアにおいては、位置情報はもとより行動軌跡やアクセス履歴といった情報の活用が進み、われわれのコミュニケーションや人間関係を変容させている。
本プロジェクトは、Buscher、Urry、Witchgerら(2011)が提案する「モバイル・メソッド」の視座や「ロケーティブ・メディア(locative media)」研究(たとえばWilken & Goggin, 2014)の動向をふまえて、人、モノ、情報、アイデア等の「移動」に関わる調査・研究と、デザインリサーチやソーシャルファブリケーション領域との接続を試みるものである。「モバイル・メソッド」では、おもに地理学、社会学をベースにしながら、人びとが日常のなかで(時には不可避的に)生成し続けている多様な「生活記録(life document)」の理解と、方法論の開発、調査・研究の設計等について探究する。
2022年度はSFC周辺の地域に目を向ける。都心から離れた土地にあるSFCはわれわれに「移動」を強いる施設であり、その探求に相応しい。いわゆるコロナ禍は私たちの移動を大きく制限したが、それによって働くことや住むことの多様な可能性が示されもした。キャンパスと周辺地域を対象にその可能性を探りたい。
本APは、別に開講されている「モバイルメソッド(プラクティス)」と連携して実施する。「モバイルメソッド(セオリー)」は主に文献や事例のリサーチとスタディを通じて方法論の開発、調査・研究の設計などの理論的研究に主眼を置き、「モバイルメソッド(プラクティス)」はその知見を実空間に応用することを試みる。「モバイルメソッド(プラクティス)」では、本APでの理論的動機にもとづいて実際に製作・設置・作動を繰り返し研究を円環的に構成する。履修者はこれら2つのプロジェクトに登録すること。
担当:
メンバー 加藤文俊・石川初
サブメンバー 水野大二郎(政策・メディア研究科 特別招聘教授)