
実体的存在としての「建物」とも、現実的行為としての「建設」とも違い、「建築」は理念であり世界観である。人工的に環境に働きかける意識が建築の起源だとすれば、それは人類の最も初源的な知的創造行為であり、それがあらゆる領域と関係を持つ総合的で境界的存在であることはむしろ自然であるとも考えられる。現代においても社会的な構造変化や、情報化の浸透、自然環境との共生などの様々な要因から、建築が扱うべき研究対象や活動領域はダイナミックに拡張と融合を繰り返している。今日的には建築分野の実務経験としても、都市開発企画のような局面から施工技術の考案に至るまで、多岐にわたる側面を他分野と積極的に連携させる能力こそが、様々な場面で必要になっている。SFCにおいても「建築」は固定的、教条的なものでなく、様々な関心領域を持つ教員を横断した創造的で総合的な知的活動の共通項として存在している。その上でこれを現実的な社会制度の上で遂行する実務能力を獲得するために、履修者にはそれぞれの研究テーマにより異なるアプローチから取り組まれている創造行為としての「建築」についての成果を持ち寄り、これを建築の実務に関わる視点から総合的に検証することで、建築領域の拡張や、新たな分野との融合を現実化させる実行力を身につけることを目的とする。