
インテリジェンス・コミュニティについて論じる。インテリジェンス・コミュニティは「情報機関」や「諜報機関」と訳されるが、こうした訳語は必ずしも正確ではない。それは外交・安全保障における政策決定・政策デザインの素材となる情報プロダクト(インテリジェンス)を政府首脳に提供する組織であり、いわゆる諜報(スパイ)活動はそのきわめて小さな一部に過ぎない。米国のインテリジェンス・コミュニティの活動は、2001年の対米同時多発テロ(9.11)、2003年のイラク戦争においても大きな問題となり、改革が行われてきた。最近では、2021年の米軍アフガニスタン撤退もまたインテリジェンスの失敗だと議論されている。インテリジェンス・コミュニティの問題は日本外交とも無縁ではなく、今後いっそう重要性を増していくものである。