
「ジェンダー・レジーム」と「量的研究」
未定であるが、例年では、一期は社会学や哲学の古典文献を読み、一期は近代日本について講義ないし文献購読を行っている。
今期は女性の職業的地位に関連する「量的研究」の論文を読むことを通じて、日本社会の特性を理解し、データに対する視点を養うことを目的とする。そのために、前半で日本の女性の状況をマクロデータから研究した論文を読み、中盤からイエスタ・エスピン‐アンデルセンの著作、さらに大澤真理の著作を読む。
「量的研究」とは、マクロデータを処理して相関(と因果)を分析する研究の総称である。それはしばしば、政府などが調査した既存のデータセットを、新しい視点から見直して行われる。そこで問われるのは、どのような新しい視点から、データを分析できるかである。ありきたりの視点からの分析は、ありきたりの結果しか導けない。
こうした分析の視点を学ぶため、女性と労働の問題を扱った量的研究の論文を読んでいく。女性の職業上の地位は、多様な要因に規定されているため、「学歴」とか「所得」といった単純な指標だけではなく、「居住地域」とか「通勤時間」といった通常は重視されない指標を組み込まないと分析できない。そうした論文を数本読んだあと、社会によって規定要因が異なるという「レジーム論」を提起したイエスタ・エスピン‐アンデルセンの著作、それを日本に応用した大澤真理の著作を読み、日本社会の特性を把握していく。
統計処理などの手法については、担当者は専門ではないので、この研究会では講義しないし、また受講者にも要求しない。あくまで日本社会の特性を理解し、視点の取り方を学ぶのが目的である。ゆえに、量的研究を行わない学生にも参考になるだろう。
受講者は授業計画に沿って指定図書を読み、毎回一人の受講者に20~30分程度の報告と問題提起をしてもらったうえで、担当者の追加の講義を行い、受講者が討議する。受講者相互のディスカッションや、教員との質疑応答を重視していきたい。