
ソーシャルセクターとヒューマンサービスの社会学
ソーシャルセクターとヒューマンサービスの社会学(仮)
ボランティアやNPO/NGO、ソーシャルビジネスなど、今日ではよく知られている諸活動も、遡れば1995年の阪神・淡路大震災におけるボランティア・ムーブメントがその重要な契機となっています。この間、日本のNPOを取り巻く状況は大きく変わりました。実践も実に多様になってきており、災害救援のみならず、まちづくり・地域活性化やヒューマンサービスから、新しい事業創造まで、大きな影響力を持つようになってきました。また、社会起業家やソーシャルビジネスが生まれたのも、企業のCSRや社会性の高い消費に関心が高まったのも、セクターを超えたダイナミックな協働も、この間の出来事と言っていいでしょう。これらに共通するのは、公共性の高い活動を、ネットワークやコミュニティの原理を活かしながら行うという点で、様々な社会課題の解決にあたり、その重要性はますます高まっています。
この研究会では、医療・福祉や教育、子育て、相談などの諸活動に、まちづくりなどを加えた「ヒューマンサービス」分野を主な対象とし、NPO/NGOやソーシャルビジネス、企業のCSRや行政との協働などの「ソーシャルセクター」が果たす役割、可能性、課題や方法論について理論と実証の双方からアプローチします。
2014年度より始まったこの研究会では、阪神・淡路大震災からの四半世紀に何が起こり、何が生まれ、どのような成果を生み出してきたのかという「日本のNPO/NGOの25年」の検証を多角的に行ってきました。昨年度からは、そうした歴史を重視しつつも、現在進行中の諸活動や今後のあり方、すなわちソーシャルセクターの未来に目を向けたいと考え、研究活動を進めています。
具体的には、全員がグループワーク(プロジェクト)と個人研究を平行して行います。前者では、上記テーマのもと、テーマやケースに基づきグループで取り組みます。後者の個人研究では、それぞれ関心のある研究テーマをみずから企画・実践し、最終的に卒業研究としてまとめることを目指します。個人研究では、何らかのオリジナルの調査・実践を伴うものを必須としています。
個人研究の多様性が特徴で、過去の卒プロでは以下のようなテーマがありました。
- 「「協働」概念の再定義 ” 神奈川のサードセクター ”構築にむけて」
- 「フィリピンにおける減災意識向上イベントの実施と検証 〜ザンバレス州オロンガポ市の事例〜」
- 「ボランティアがある社会 -若者の語りを考察する-」
- 「シニアはなぜ「働く」のか 〜シニアボランティア活動が示す地域社会で生きていくということ〜」
- 「シェアリングエコノミーの社会的価値 -貨幣とコミュニケーションの視点から-」
- 「プロボノを通じた持続的市民活動の実現」
- 「地域のセーフティネットとしての子ども食堂 ~子供の貧困解決の一端を担う地域の役割~」
- 「シングルマザー向けシェアハウスの提案」
- 「日本における教育の変遷と未来 アクティブラーニングの可能性」
- 「チームプレーが社会的孤立者にもたらすもの ー『ビッグイシュー』のサッカープログラムを事例としてー」
- 「地震災害時における地域コミュニティの被害抑制の効果の検証」
- 「京都・出町桝形商店街にある“つながり” 〜商店街がそこにある理由〜」
- 「戦略的投資としての社会貢献 -産学連携による社会貢献は戦略的投資となり得るか-」
- 「アフリカの貧困とセクター間の協働可能性 ―真の社会的包摂に向け、我々が貧困問題を考える理由―」
- 「ダンス必修化の現状からみる課題と展望 〜教育現場でのダンスという新たな領域〜」
この他、NPOの評価、文化活動とまちづくり、子どもの貧困、地域での外国語教育、環境とデザイン、郊外都市研究などに取り組んでいる学生もいます。