
微⽣物ゲノム学(先端⽣命科学)/環境バイオインフォマティクス(先端⽣命科学)
荒川・金井・黒田・河野・杉本・鈴木・曽我・辻本・内藤・平山の10人が担当する研究会は、先端生命科学合同研究会として、合同で運営しています。大学院のアカデミックプロジェクト「先端生命科学」とも合同で運営しており、学部生、大学院生そして教員が一緒になって研究を進めます。どの教員の研究会を履修すべきかについては、履修許可の連絡の際に案内します。研究ハイライト: http://www.iab.keio.ac.jp
微生物は、様々な環境(人体、建物、下水、大気、土壌、植物など)で重要な役割を果たしている一方、様々な感染症の原因として人類の健康を脅かしている存在です。本研究会では、バイオインフォマティクスとゲノム解析により、環境微生物の多様性を理解し、その医学・農学・工学分野への有効活用を目指しています。
私たちは、再現可能なバイオインフォマティクス、ゲノム微生物学、および都市のマイクロバイオーム(微生物群集とその遺伝子の総体)に関する研究を進めています。このまま何の対策もとらなければ、2050年には薬剤耐性菌による感染症は全世界で年間1000万人の死亡者を出すとも予測されています。プラスミドは、薬剤耐性遺伝子を持ち、微生物間で水平移動することで、微生物群集における薬剤耐性の拡散に寄与しています。我々は、都市環境における薬剤耐性遺伝子と可動遺伝因子(プラスミド、ウイルス、転移因子など動く遺伝子)を同定し追跡するために、世界中の大量輸送システムなど人工環境で微生物サンプルを収集してきました (International MetaSUB Consortium, 2021, 2022 [https://metasub.org/])。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下、マスギャザリング(ワールドカップ、オリンピック・パラリンピックを含む国際的なスポーツイベント)前後に世界各地の都市環境から微生物サンプルを収集しています (http://metasub.org/projects/)。バイオインフォマティクス・ツールを組み合わせることにより、微生物と薬剤耐性の世界地図を作成し、プラスミドやウイルスなど可動遺伝因子の宿主域と伝播経路を推定し、微生物のライフスタイルに関する洞察を得ることを目指します (Suzuki et al., 2017; Yano et al., 2018; Merino et al., 2019; Tokuda et al., 2020)。