シラバス

科目名研究会B (1)

授業概要

学部・研究科
総合政策・環境情報学部
登録番号
38484
科目ソート
A1102
科目名
研究会B
分野
研究プロジェクト科目
単位
2単位
開講年度・学期
2023 秋学期
K-Number
FPE-CO-05003-211-88
研究会テーマ

音楽神経科学(NeuroMusic)

開講年度・学期
2023 秋学期
曜日・時限
火 3限
授業教員名
藤井 進也
実施形態
対面
授業で使う言語
日本語
開講場所
SFC
授業形態
※「授業形態」と「能動的学修形式」の対応についてはこちらをご覧ください。
講義, 演習, グループワーク
GIGAサティフィケート対象
非対象
研究会・来期の研究プロジェクトのテーマ予定

音楽と若者のこころのウェルビーイング Music Minds1020 Project

音楽コンテンツを用いて、若者の生きづらさを解消し、高いウェルビーイングを実現するにはどうすればよいだろうか。本研究室では、音楽をデジタルメディスンとして効果検証し、音楽を薬として若者のこころに処方する方法について研究している。本プロジェクトは、国立研究開発法人科学技術振興機構Minds1020Labのホームページや音楽介入が若者のメンタルヘルスに及ぼす影響についてまとめたレビュー論文を事前に熟読することを奨める。



音楽と精神医学 Music Psychiatry Project

ヒトの音楽性と心(こころ)の脳内起源とは一体何か。音のピッチやリズム、ハーモニーを知覚生成する能力と心の健やかさの間にはどのような関係があるのか。本プロジェクトでは、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室MTR Labと共同で、統合失調症、うつ病、軽度認知障害、双極性障害、自閉症スペクトラム障害等の精神疾患を対象とし、音楽機能と精神症状の関係性について研究する。SFCと医学部信濃町を行き来しながら、経頭蓋磁気刺激法(TMS)と高解像度脳波計(EEG)を組み合わせたTMS-EEG、磁気共鳴画像法(MRI)、安静時脳機能画像法(rs-fMRI)、拡散テンソル画像法(DTI)、MRスペクトロスコピー(MRS)、メタボローム解析、認知機能検査、音楽機能評価テストの実施等、最先端の神経科学・医学研究手法について学ぶことが可能である。本研究プロジェクトに取り組みたい人は、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室MTR Labの研究成果や統合失調症患者の音楽機能に関する論文を事前に熟読することを奨める。



音楽療法の科学 Music Therapy Science Project

音楽療法は、音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて、心身の健康の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用することえある(日本音楽療法学会)。近年、音楽療法のニーズは高まっており、介護施設や医療現場などで用いられているが、根拠となる科学的エビデンスが不足していることが課題である。よって、科学的根拠に基づいた音楽療法(Evidence-Based Music Therapy)の発展が希求されている(板東, 2008; 佐藤, 2011)。本プロジェクトでは、富山県高岡市にある医療法人社団 紫蘭会 光ヶ丘病院と共同で、音楽療法の効用について科学的に検証する。デイケアでの音楽療法・音楽支援療法・BGM使用の現場を見学すると共に、認知・音楽機能評価を実践し、認知・音楽機能評価のデータ解析、統計学的分析の方法についても学ぶ本研究プロジェクトに取り組みたい人は、神経学的音楽療法に関する論文を事前に熟読することを奨める。



ドラマージストニア研究 Drummer’s Dystonia Project

局所性ジストニアは、不随意で持続的な筋肉収縮を引き起こす神経疾患である。局所性ジストニアは音楽家に多く見られるが、ドラマーを対象としたジストニア研究は世界的に見ても非常に限られており、ドラマージストニアの現状や発症要因、神経メカニズム・治療法には不明な点が多い。本研究プロジェクトでは、プロドラマーのジストニア事情の現状についてアンケート調査、行動分析、筋活動分析を行い研究する。本研究プロジェクトに取り組みたい人は、ジストニアに関する研究記事や、ジストニア診療ガイドラインなどを熟読しておくことを奨める。



グルーヴリズム研究 Groove Rhythm Project

グルーヴ感とは、音楽を聴いて心地よさを感じ、思わず身体を動かしたくなる感覚のことをいう。しかしながら、どのような時間のゆらぎやリズムに人間は「グルーヴ感」を感じるのか、その詳細はまだ不明である。本研究ではどのような機械の打ち込みリズム音がヒトを心地よくさせ踊りたくなるような「グルーヴ感」を生み出すのかについて研究する。本研究プロジェクトに取り組みたい人は、藤井のグルーヴ総説論文を事前に熟読することを奨める。



バイノーラル音/ASMR研究 Binaural ASMR Project

ASMR(英: Autonomous Sensory Meridian Response)は、人が聴覚や視覚への刺激によって感じる、心地良い、脳がゾワゾワするといった反応・感覚のことをいう。本プロジェクトでは、耳の直近で回転移動するバイノーラル音やASMR音を聴取することで、ヒトの認知機能や運動機能がどのように変化するのかについて研究する。本研究プロジェクトに取り組みたい人は、藤井研・仲谷研のバイノーラル論文を事前に熟読することを奨める。



音楽聴取とリラックス Music Relaxation Project

音楽を聴取することで、リラックスして癒される気分になることがある。しかし、音楽聴取によってヒトの心拍数や血圧、呼吸がどのように変化するのかについてはまだまだ不明な点が多い。本プロジェクトでは、どのような音楽によりヒトやよりリラックスできるのか、音楽聴取に伴うヒトの身体の生理学的変化について研究する。本研究プロジェクトに取り組みたい人は、音楽聴取に伴う心血管変数・呼吸変数の変化に関する論文を事前に熟読することを奨める。



音楽家の脳 Musician’s Brain Project

音楽家の脳は、非音楽家の脳と比較して、一体何がどのように異なるのか。近年、音楽経験を豊富に積んだ高齢者は、音楽経験の少ない高齢者に比べて、ワーキングメモリーや実行機能など、認知課題の成績が優れていると報告された。これらの先行研究を踏まえると、音楽はヒトの認知機能の改善や維持、長寿健康社会の実現に有用であると示唆されるが、その神経生理メカニズムは十分に解明されていない。そこで本研究では、核磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)や、経頭蓋磁気刺激と高解像度脳波の同時計測手法(TMS-EEG)を用いて、音楽家と非音楽家の前頭前野グルタミン酸・γアミノ酪酸(GABA)神経機能を横断比較し、音楽機能・認知機能との関連性を解明する。本研究プロジェクトに取り組みたい人は、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室MTR Labの研究成果と、音楽家の認知機能に関する総説論文を事前に熟読することを奨める。



音楽と赤ちゃん Baby Music Project

ヒトは生まれてから発達するプロセスのどの段階でいつから音楽のリズムに合わせて踊るのだろうか。本プロジェクトでは、東京大学大学院教育学研究科発達脳科学研究室と共同で、音楽を聴く乳児の身体運動や、乳児の泣き声リズムについて研究する。本研究プロジェクトに取り組みたい人は、東京大学大学院教育学研究科発達脳科学研究室HPや、藤井の赤ちゃんダンス論文赤ちゃんの泣き声に関する研究について事前に熟読することを奨める。



ランニング支援のための音楽フィードバック Running Music Project

ランニングやウォーキングなどヒトの身体運動を支援するのに最適な音楽とは一体何か。藤井研究室では現在、ORPHE株式会社と共同で、ランニング支援に最適な音楽の自動生成について研究している。本プロジェクトでは、非音楽聴取時と音楽聴取時とでどのくらいランニング時の歩様や主観的疲労度、心地よさ、運動モチベーションなどに違いがあるのかについて科学的に研究する。本研究プロジェクトに取り組みたい人は、ORPHE株式会社のHPや、音楽ジャンルの違いがランニング時の努力感に及ぼす影響を調べた論文を熟読しておくことを奨める。



うたラボ UTA Lab Project

ゴスペラーズ北山陽一氏と共同で、感動する「うた」とは何かについて研究する。例えば、カラオケで高得点の歌は本当にひとの心を打つのか、審査員はミュージシャンの見た目にどれくらい影響されて音楽を評価しているのか、客観的なボーカルトレーニング方法の開発などについて研究している。本研究プロジェクトに取り組みたい人は、Praat を用いた音声解析の基礎など(Praatでなくてもよいが具体的に音声解析する手法)について事前に自主学習しておくことを奨める。

詳細

講義概要

NeuroMusic 研究会概要

我々の日常生活には、音楽が溢れている。では音楽とは何か、と問われたとき、科学的な観点や知見に基づいて洞察できる人々はこの世にどれくらい存在するだろうか。我々の日常に当然かのように存在する音楽。しかし我々は、音楽のことをまだよく知らない。NeuroMusic 研究会の主題は、音楽の「未知」を解き明かし、その本質に科学的に迫ることである。

近年、脳・神経科学の飛躍的な発展に伴い、音楽はヒトの脳や身体でどのように処理されているのか、その仕組みが徐々に明らかになってきた。得られた知見の中で、とても興味深いのは、我々が普段何気なく楽しんでいる音楽が、実は人類の文化・進化・発達の起源や、社会性や創造性、知覚、認知、運動、記憶、情動、学習など、人間の生物としての本質に非常に深く関わっている点である。なぜ、我々ヒトの脳や身体には、音楽に感動したり、癒されたり、踊ったり、歌ったり、演奏したり、音を楽しむ能力が備わっているのか。その理由を脳・神経科学の観点から解き明かすことは、人間の本質を探究することに他ならない。「音楽神経科学 (Neurosciences and Music: NeuroMusic)」は、人間の本質や起源に迫りうる、大変心躍る科学研究分野である。

本研究会の目的は、「音楽神経科学(NeuroMusic)」をテーマに、謎に満ちたヒトの音楽性の脳内起源を解き明かすことである。音楽とは一体何か、音楽サイエンス分野の開拓に取り組みたい人は、是非研究会の門を叩いてほしい。心から歓迎する。