
マレー社会(ムラユ世界)とは、東南アジア島嶼部に広がる海域世界、ムラユの文化を共有する文化圏を意味します。この地域は現在、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、インドネシアなどの国家として分裂していますが、かつては大小様々な集団や王国が存在し、それぞれが緩やかな繋がりを持つ空間でした。ムラユ世界には、東南アジア出身の人々だけではなく、東西南北(東アジア、オーストラリア大陸、西欧諸国など)からやってきた商人なども参与しており、世界中へ繋がる広大な交易網に商品や人を流通させていました。
本講義は、この壮大な人びとの繋がりを支えたムラユ世界の歴史や文化を学び、西欧中心主義に傾きがちな価値基準の相対化を目指します。具体的には、現代の国境や資源の管理、国民国家の形など、端的に理解されている事柄を見つめ直し、その価値観を相対化することを試みます。