
庄内平野には美しい農村風景が広がり、日本海の磯浜や砂浜、雪深い出羽山地、各所に湧き出る温泉など、変化に富んだ自然環境に囲まれている。先人の努力により培われてきた米づくりや、約60種類が継承されている生きた文化財・在来作物をはじめ、四季折々の郷土食、家庭に伝わる行事食、精神文化から生まれた料理など、多彩な食文化が現在まで受け継がれ、鶴岡市は日本で初のユネスコ食文化創造都市として認定されている。
市街地は、城下町の都市構造を現代に残し、旧庄内藩校致道館や明治の洋風建築物はじめ、数多くの歴史的な遺産が残されている。さらに、学術研究を尊ぶ江戸時代以来の城下町文化とともに、日本遺産として認められた出羽三山・羽黒修験などの山岳信仰、松ヶ岡開墾場を中心として明治維新後に武士が刀を鍬に替えて興した絹産業、また、黒川能などの民俗文化、農山漁村文化など、多様で重層的な文化構造を見ることができる。
本講では、このような鶴岡市と庄内地域の恵まれた風土を素材とし、自然や歴史に育まれた文化の楽しみ方を体験を通して学ぶことで、理想的な生活環境のあり方と生き方を考える。