
この国はいったいどのような過程をたどって今のすがたになったのだろうか。150年前に欧米列強から独立を守り、わずか50年後には世界の列強となった。戦後、焦土のなかからたちあがり、わずか30年で経済大国となった。この「成功」過程は、日本が持つ文化的な魅力とあいまって、世界のひとびとを惹きつけてやまない。
しかし、日本に生まれた者、日本で育った者、日本で学ぶ者にとって「日本とはなにか」という問いに答えることは容易ではない。現代は私たちにとって所与の環境であり、近代以前は暗記の対象だったからだろう。現在の視点に立ち、これまでとこれからの日本を考える時間を持たなければその問いに答えることはできない。同時に、その負の側面について正面から論じることもできない。
本講義は、これまで分けて語られがちであった近代と現代、戦前と戦後を架橋することで、日本のこれまでを現在とこれからに結びつけたうえで、各国から日本がどう見えているか見られているかという俯瞰的な視点を持ちながら、「日本とはなにか」という問いに対するそれぞれの答えを育んでいくことを目的とする。