
国際社会はパワーバランスの歴史的変化と地政学的競争の激化に伴い、今、重大な挑戦に晒されている。その中で、気候変動問題や感染症危機を始め、国境を越えて各国が協力して対応すべき諸課題も同時に生起しており、国際関係において対立と協力の様相が複雑に絡み合う時代になっている。このような世界の歴史の転換期において、日本は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境のただ中にあり、戦後の安全保障政策を大きく転換しようとしている。(「国家安全保障戦略」国家安全保障会議・閣議決定、令和4年12月16日から抜粋)
本講義では、日本および世界の国々で採用されている防衛政策を比較・分析するとともに、従来の陸・海・空に限られていた作戦領域が宇宙やサイバースペースに拡大している現状や、地球温暖化に伴って注目されるようになっている環境安全保障や氷が溶けることで戦略的価値が高まっている北極海の問題、あるいは多様な技術的発展が防衛政策に与えている影響について検討し、平和を維持していくための防衛政策のあり方を講義していくことにしたい。