
大航海時代に端を発する「世界の一体化」は、その中核となる地域の変化を伴いながら、国民国家がグローバルなネットワークを支配する単位となった「長い19世紀」―革命の時代の始まりから第一次世界大戦の勃発まで―を経て、第二次世界大戦後、「グローバル化」としてさらに進展した。今日、ヒト・モノ・カネ・情報の自由な移動は加速化し、その規模も拡大し、さまざまな人間社会が相互により一層結びつけられている。その一方で、民族や言語、宗教などの同質性を強調することで国民としての一体感を形成し、その一体感のもとで安定を図ってきた国民国家の影響は依然として根強い。
不可逆的に進行するグローバル化のなか、国民国家は、国籍やエスニシティなどの異なる人びとが互いの文化的差異を認め合い、対等な関係を築きながら共に生きていく社会を実現し得るのだろうか。実現し得るのであれば、それはいかにして実現可能なのだろうか。こうした問いへの答えを模索するのが本授業の目的である。