
世界で初めて人工衛星の打上げが行われてから65年以上が経過した。この間に人類が行ってきた宇宙活動としては、国際宇宙ステーションの運用や惑星探査といった民生目的のものがよく知られている。また、最近では数多くの宇宙関連スタートアップが国内外で誕生しており、商業目的の宇宙活動にも注目が集まるようになっている。
その一方で、軍事目的の宇宙活動については、民生・商業目的のものに比べれば依然として認知度が低い。しかしながら、人類による宇宙活動は軍事と分かちがたく結びついてきた。軍事目的の宇宙活動を理解しなければ、宇宙開発利用の全体像を把握することはできない。さらに、軍事目的の宇宙活動を理解しなければ、軍事や国家安全保障を包括的に捉えることも難しい。
同時に、人類は宇宙利用を安定的に行うことができるように、宇宙開発利用に関わる国際ルールを策定するなど、宇宙ガバナンスにも取り組んできた。日々の経済・社会活動において宇宙システムが不可欠な存在となる中、宇宙ガバナンスに取り組む重要性は一層増大している。
こうした問題意識に基づき、本講義では宇宙安全保障の2つの側面について、履修者とともに分析・考察を行う。1つ目の側面は「安全保障のための宇宙」であり、宇宙が軍事目的にどのように利用されてきたのか、また今後利用される可能性があるのかを考える。2つ目の側面は「宇宙のための安全保障」であり、安定的な宇宙利用を維持するために、いかなる宇宙ガバナンスが模索されてきたのか、さらに今後どのような取り組みが必要となるのかを分析・議論する。