
シェイクスピア劇における異性装とジェンダー
演劇は視覚芸術と文学が一体となり、役者の肉体を通して同時に多くの人にメッセージを送れる独特な芸術形態です。本研究会は、演劇研究の導入となることを目指します。2024年度のテーマは、イギリス・ルネサンス期を代表する劇作家ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)が書いた戯曲における「異性装」と「ジェンダー」です。シェイクスピア劇には、『十二夜』のヴァイオラや『お気に召すまま』のロザリンドなど、男装するヒロインが登場します。当時は、聖書の教えを礎とする通念により女性が商業演劇の舞台に出ることができず(イギリスで女優が誕生するのは1660年の王政復古以降)、これらの女性登場人物は、少年俳優が演じることを前提に描かれました。現代では「異性配役」の上演が行われることもあります。舞台で「性を装う」ことの演劇的効果と、その歴史的・文化的背景を学び、約400年前に書かれたシェイクスピア劇が、21世紀を生きる私たちにどのような視座を投げかけているかを探究します。
本研究会では、「異性装」を扱うシェイクスピア劇を読み、ワークショップ形式で特定のシーンの台詞や演出を実践していきます。戯曲・文献講読は、分担を決めて、担当者が発表し、履修者全員で議論します。戯曲が俳優の身体を通して舞台で上演されるとはどういうことか、実際の舞台上演映像等も活用しながら考察と議論を重ねます。この過程で、履修生は研究テーマを発掘し、リサーチの問いを立てて構想を練って学期末の研究発表に結びつけます。この研究発表を発展させて期末レポートも提出していただきます。