
建築はそれ自体が光・音・熱・風といった環境要素を制御する装置であり、土地ごとの気候に適した環境制御装置としての建築が近代以前より「驚異の工匠たち」によってつくられてきた。産業革命以降、エネルギー・電力供給による電灯・暖冷房・換気設備・エレベーターといった機械設備は人間の生活環境を急速に拡大させたが、同時に建築はそのような機械設備による環境制御をデザインに取り込むために変貌していった。その後顕在化していく環境汚染・オイルショック・地球温暖化といった「地球の有限性」の問題は、省エネルギー・省CO2・環境共生といった総合的なサステイナビリティの視点を建築に求めるようになり、さらには、東日本大震災以降、エネルギー供給停止を視野にいれた事業継続計画(BCP)や、脱原発をはじめとするエネルギー源に関する再考も求めるようになった。そこで、単体だけではなく「総体」としての都市を対象とし、さらにはヒューマンビヘイビアにも働きかけることでサステイナビリティを実現しようとする「スマートシティ」化の試みがなされている。以上のような、環境制御装置としての建築デザインの背景、理論、設計手法、実例について学ぶ。